02


「烏有、お前衣角さんに冷蔵庫のプリン食べて良いって言ったんだって?」
配達する小包を数える俺の視界にずいと入り込んで凜子は俺を睨みつけた。
下から見上げられたって睨んでるんじゃ可愛くも何ともない。
上目づかいなんて程遠い。
「言ったけど…‥お前のだったのかよ」
心底うんざりした声が自分から出たのが分かった。
甘味好きの凜恋は砂糖菓子が絡むと本当にうるさい。そして長い。
ちらりと見た時計はもうすぐ3時だ。
あぁ今から配達に行かないといけねぇのに。
「なぁその話、配達が終わってからで、」
「あのプリン食べるのをあたしがどれだけ楽しみにしてたのか分かるか?」
俺の話なんて聞いちゃいねぇ凜子が叫ぶ。
「あれ1つでいつもの3つ買えるくらい高いやつだったのに!奮発して食べるの楽しみにしてたのに!!」
「そんなこと言うくらいなら名前でも書いときゃいいだろ!だいいち食ったのは俺じゃねぇ、怒るんだったら衣角に怒れよ!!」
思わずでかい声がでて
ますます凜子の眉がつり上がった。
「衣角さんは烏有が食っていいって言ったからプリン食べた、って言ってた!」
・・・ガキかよ
よく考えてみろよ、どう考えたっておかしいだろ、結局食った奴が悪いだろうが!
なんて言葉は頭に血をのぼらせた凜子には届かない。
どうしてこいつは毎回衣角の話を頭から信じるんだ?
いつもバカみたいに丸め込まれて。
少しでもいいからあのペテン野郎が俺に罪を笑顔で塗りたくっていることに気づけ、バカ。
あぁ、めんどくせぇ・・・
つい漏れてしまったため息が癪にさわったらしい凜子がさらに口を開きかけたとき、鋭い声がとんだ。
「お前達、ぎゃんぎゃん喧嘩するんじゃない!」
2階にいたはずの衣角が階段の真ん中で声を張り上げた。
「うるさくて集中できない、昼寝もできないじゃないか!」
いきなりのことに黙りこんだ俺達を衣角は満足げに見て頷く。
「それでいい。静かにしたまえ君たち」
顔を見合わせる凜子と俺。
そして同時に衣角に叫んだ。

「お前にいわれたくねぇ!!」